
研究フォーラムについて
<趣旨>
2050年カーボンニュートラルの目標の実現のためには、再生可能エネルギーの主力電源化、
わけても、洋上風力の飛躍的拡大が必須となっています。
洋上風力については、2019年には、
「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」が施行されました。
また、2020年には、洋上風力ビジョンが策定され2040年に4500万kwという導入目標値も掲げられました。
しかしながら、風力発電については、特に騒音や景観、自然環境への影響から、
地域の合意形成がうまくいかず、計画が断念に追い込まれた事例も生じています。
もちろん、欧米においても、風力発電をめぐる反対運動は起きており、
風力発電の社会的合意形成をどう図っていくかは、いまや世界的な課題となっています。
特に、日本における洋上風力は、海岸の地形が複雑であることやすぐ深くなるといった環境にあり、
より住民との軋轢が生じやすい状況にあるといえます。
すなわち、日本においては、地域の社会的受容性はより重要な課題となってくると考えられます。
この問題を検討するにあたって、重要な論点は以下のようなことが考えられます。
まず第一点に、社会的合意形成というと、ともすれば、
風力発電が立地する地域の合意形成プロセスととらえがちですが、
社会的合意形成には、コミュニテイ受容、社会政治的受容、市場受容、
の3つの課題が複合的に関係しているといわれています。
いままで、社会的合意形成というと個々の立地の問題ととらえられてきましたが、
風力発電に対する政治的な位置づけや国民感情といったことも社会的合意形成には大きく影響します。
そもそも、風力発電に関する制度的な未整備が地域の社会的受容性に大きく影響しているといわれています。
風力発電が地域にとって価値のあるものとみなされるためには、
風力発電の立地地域の関係者の方々の参画の方法、
関係者が景観などの課題を理解できる手法の開発、
風力発電を利用した地域振興という視点も重要となってくると思われます。
第二に、「海域再エネ利用法」の整備がなされましたが、
「洋上風力ビジョン」の導入目標を実現するためには、いろいろな課題が浮かび上がっており、
課題への対応策や制度・ルールの整備を進めていく必要があることが、政府の審議会でも指摘されています。
この制度的課題の解決のためには、地元調整の枠組みの制度化や、
地域や漁業との共生策の議論の前提となるデータを国が主導して整備することが提案されています。
洋上風力はわが国では始まったばかりであり、
社会的合意形成のためのデータや事例が決定的に不足しているのが現状です。
このプロジェクトでは、こうした、課題に対応していく方策について、
関係者が一堂に会して議論を行う場を提供するとともに、関係者による調査・分析を行っていきます。
お問い合わせ先
洋上風力発電の社会的合意形成に携わっておられる研究者でフォーラムに参加希望の方は
下記までお問い合わせください。
ほり しろう
堀 史郎
(福岡大学研究推進部)